ソウル拘置所に収監されている尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領は8月1日、金建希(キム・ゴンヒ)前大統領夫人の各種の疑惑を捜査している特別検察官(特検)のチームによる逮捕状執行に応じなかった。当時、被疑者がどのような服装をしていたか、特検チームは詳細に報道陣に教えた。数時間後、主な外信に「韓国」「前大統領」と共に「下着(underwear)」という単語が載り始めた。「ランニングシャツと下着だけ」..
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ソウル拘置所に収監されている尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領は8月1日、金建希(キム・ゴンヒ)前大統領夫人の各種の疑惑を捜査している特別検察官(特検)のチームによる逮捕状執行に応じなかった。当時、被疑者がどのような服装をしていたか、特検チームは詳細に報道陣に教えた。数時間後、主な外信に「韓国」「前大統領」と共に「下着(underwear)」という単語が載り始めた。「ランニングシャツと下着だけ」(ロイター)、「下着の色に関する情報は無い」(フランス通信=AFP)、「新たな抵抗方法」(AP)といった文章の行間に、あざけりが込められていた。
親与党陣営は、こうした外信報道に歓呼しつつ「国の恥だ」と被疑者を非難した。進歩(革新)系の与党「共に民主党」支持者の一部は、被疑者が裸になって寝そべっている写真を人工知能(AI)で合成してばらまき、ほくそ笑んだ。ある元検事は、ユーチューブで「次の逮捕時は布団をかぶせて(包んで)出よう」と言った。先の大統領選挙直前に民主党へ入党したこの人物は、保守系のセヌリ党で国会議員バッジを付け、2022年の大統領選挙では尹錫悦陣営で活動していた。
国の格が損なわれたという指摘には同意する。だが特検チームと支持層は、国際的な恥さらしに遭った国の国民であることを忘れたかのごとくこの事態を楽しんでいるようで、残念だ。曺国(チョ・グク)元法相が「検察改革」の名分として土台に据えた「人権保護捜査規則」では、被疑者の私生活を守るようになっている。特検のブリーフィングには規則違反の余地がある。かつて検察の被疑事実公表に歯ぎしりしていた支持層が、外信の「下着報道」に熱狂している姿は見苦しい。
「国民に対し恐れ多い。誠実に取り調べに臨みたい」。朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領が2017年3月、罷免から11日後に検察に出頭して語った言葉だ。盧泰愚(ノ・テウ)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)元大統領も被疑者の身分で国民の前に立ったとき、同じように語った。韓国国民は、その後数年間、手錠をかけられたまま護送車で法廷へと護送される朴・元大統領の姿を見た。暑さにもかかわらず長袖のジャケットにズボンという服装だった。元国家元首として品位を守ろうという気持ちだったと思う。
被疑者は今年1月、現職大統領の身分で逮捕・勾留される未曽有の混乱の中で、「国民に対し恐れ多い」というお決まりの声明すら出さなかった。収監中、逮捕状の執行が「恥をかかせようとするもの」だと考えて拒否することはできる。だが、元職の大統領が一国民かつ被疑者としての権利を選択した瞬間、さらに重い責任は放棄したと見ることができる。その恥辱は、同じ道を歩んだ前任者たちが、国の体面のために耐えた歴史でもあった。
戒厳事態の後、韓国政府を報じる西欧メディアの態度は陰に陽に優越感を帯びていた。「急速な経済的・文化的成果にもかかわらず、制度圏に根を下ろしている権威主義」(ガーディアン)、「冷戦的な分裂の根は軍事政権」(ウォールストリート・ジャーナル)…韓国経済・文化がどれほど隆盛を迎えようと、その土台である民主主義くらいは「アジアらしく劣等」であってほしいという欲望のように読める。世界が見守っている。特検チームは法律と手続きに基づいた品格ある言語で、大韓民国が民主文明国家であることを示してほしい。
ウォン・ソンウ記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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