【コラム】金建希を「第2の金正淑」に仕立て上げる人々

展示企画者で資産家の尹次期大統領夫人が「3000円のサンダル」
「質素」強要する大衆とメディア
「偽善的な質素」強要するのはもうやめよう

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の妻・金正淑(キム・ジョンスク)夫人をめぐる騒動は現在、二つある。一つは、前任者とは違い、なぜあれほど観光地訪問が多かったのか。もう一つは、なぜあれほど服装が華やかだったのか、だ。大統領夫人の外国訪問は手続き上、問題がないし、服代も「私費」で払ったというのだから、ひとまずそう信じてみることにしよう。違法性があるなら、いつかは明らかになるだろうから。

 「ぜいたく」批判を招いたのは青瓦台だった。かいつまんで言えば、青瓦台(大統領府)の卓賢民(タク・ヒョンミン)儀典秘書官、高ミン廷(コ・ミンジョン)報道官、任鍾ソク(イム・ジョンソク)元大統領秘書室長ら「偶像化人材」たちだったと記者は判断している。彼らの口を通して伝えられた夫人は、ホームショッピングで買った米国のデザイナー、ヴェラ・ウォンのパンツスーツを着て、外国の首脳がプレゼントしてくれたスカーフでブラウスを作り、自ら柿(かき)の皮をむいて干し柿にする倹約上手な主婦であり、質素な青瓦台の奥様だった。

 価格が500万ウォン(約50万円)というデザイナー、ヤン・ヘイルの服(レンタルしたと言っている)、フェラガモのコートなどの話はしなかった。「食欲がなくてご飯を一さじ、水と共に流し込んだ」と言ったが、テーブルに載せられた鶏肉とキノコの水炊き、海鮮丼、牛ヒレ肉の焼肉の皿はすべて空になっていた。

 国民は大統領夫妻にきちんとした装いを望んでいる。それについて誰も悪く言っていない。ところが、「偶像化人材」たちは「質素なのに最高におしゃれでいらっしゃる」と世論操作を試みた。

 もちろん、こうした「偽善的な質素さ」は文在寅政権の発明品ではない。十数年前にも「夫が公職選挙に出ると、その妻はエルメスのバッグを全部クローゼットにしまい込んだ」といううわさがあった。

 政治家たちはメディアや一般国民が望む姿を見せるようになっている。それが一番有利だからだ。だから、こんな気がした。メディアとメディア消費者が合作して公職者たちに偽善を強要しているのではないだろうか、と。文在寅政権の青瓦台の人々はそれを如才なく利用したのではないだろうか。

 4日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の妻で文化コンテンツ企業「コバナ・コンテンツ」代表でもある金建希(キム・ゴンヒ)夫人の写真が久しぶりに公開された。服装はありふれたものだったが、サンダルには小さなロゴがあった。すると5日、そのサンダルが「金建希ファン・サイト」で話題になったという。

 「GENUINE GRIP(ジェニュイン・グリップ)」という会社のこのサンダルは価格が3万-4万ウォン(約3000-4000円)だ。医師や看護師、キッチンで働く人々が愛用している米国の「クロックス」にも似ている。ニュースを検索すると、「もう売り切れ」「金建希は完売女(身に着けたものを完売させる女性)」「驚くべきサンダルの値段」といった言葉が出てくる。事実、同社のホームページには「注文が集中しているため、アイボリー(金建希夫人が履いていた色)の購入は不可能な状況で、追加生産に入った」という告知があった。今年3月9日の大統領選挙投票日に2万ウォン(約2000円)のスカーフを巻いていたという話もあらためて流れている。

 昨年、人気バラエティー番組『イ・スンギのチプサブイルチェ~師匠に弟子入り』に尹錫悦氏(当時、大統領選候補者)が出演した。家の中には今一番人気のリビングルーム・書斎用家具「USMハラー」をはじめ、博物館級と評されている「フリッツハンセン」の家具シリーズ「PK80」などがあった。照明も一つ数百万ウォン(数十万円)のものが付いていた。リビングルームとキッチンの家具だけで低く見積もっても数千万ウォン(数百万円)だ。

 金建希夫人は展示企画者だ。絵を扱うなら家具や服を見る目もかなり高いだろう。大学の声楽科を卒業した生地店の娘という金正淑夫人も趣味趣向がある。2012年、文在寅氏が大統領選候補だった時に座って広報動画を撮ったいすも1000万ウォン(約100万円)近い「ハーマンミラー」のイームズラウンジチェアだった。これが批判を浴びると、「文候補夫人は建設業者からモデルハウス展示家具15点を1000万ウォンで購入した」と言った。「中古のイームズラウンジチェアを50万ウォン(約5万円)で買った」という弁明もあったが、モデルハウス展示品などの中古品は当時でも500万ウォン(約50万円)だった。物議を醸したが、大統領選挙に敗北して事態は収まった。しかし、2017年に青瓦台に入ると、再び「質素の大行進」を始めた。

 金建希夫人には70億ウォン(約7億円)近い資産があるという。いいと言われる絵、彫刻、家具、服、アクセサリーをたくさん見てきたことだろう。何度も着ていたという服もブランド物だと推測する人は多い。中高生たちもブランド品の財布を買ってほしいと言う時代だ。財力があり、見る目もある人が「私のお金を払って私が買う)」ことについて、もう騒ぎになってはならない。

 権力者や金持ちが「私は安い物を着ています」と「質素さ」まで奪ってはならない。金建希夫人のファンたちは「建希夫人の3万ウォンのサンダル」を称賛しているが、どれだけ大きな政治的負担になることか、気づいてほしい。ひとたび「偽善」でつまずけば大恥をかく。今の青瓦台がそれを証明している。

朴垠柱(パク・ウンジュ)エディター兼エバーグリーン・コンテンツ部長

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