チョムスキー氏と彼を偶像視する韓国左派、偽善ぶりもうり二つ【萬物相】

 ポーランド出身の左派革命家ローザ・ルクセンブルクは「私の祖国はプロレタリア」と語った。扇動的な演説にたけ、左派のブレーンとの評価を受けた。しかし、私生活ではブルジョアを夢見ていた。同僚のヨギヘスに送った求愛の手紙には次のように書かれていた。「私たちの部屋を飾るきれいな装飾品を買いました、私の愛するあなたよ。(中略)こうした冒険的な人生を試みるよりも、あなたと一緒にスイスのどこかで暮らすべきだったのに」。思想的指向と物質的豊かさの間でさまよった左派革命家による矛盾に満ちた内面告白だった。

 左派による「理念と生活は別」といった行動を米国では「リムジン左派」と呼ぶ。1960年代、リムジンに乗って選挙運動を展開していた左派候補者に由来する。マサチューセッツ工科大学(MIT)のノーム・チョムスキー名誉教授が代表的だ。チョムスキー教授は言語学者だが、名声を享受するという分野は「進歩」寄りの人物が行ってきた米国社会批判の神髄だ。ところが「言葉と行動が伴っていない」。米国防総省を「人類史上最高の悪」と非難しておきながら、国防総省が発注した数百万ドル(数億円)の研究契約を獲得している。米国企業のことを独裁者と呼ばわりながら、こうした会社の株式を購入してひんしゅくを買ったこともある。

 最近、新たなうわさが取り沙汰されている。児童性犯罪で服役し、2019年に獄死した億万長者の金融家ジェフリー・エプスタインと数年にわたって交流しながら巨額の金融振替取引を行っていた事実が明らかになったのだ。エプスタインの生前に彼の専用機を愛用し、彼が児童性犯罪を犯した邸宅で夕食を楽しんだこともある。エプスタインの性犯罪が公開された後も、彼と交流を続けていたという。

 米国の進歩陣営でさえ、こうしたチョムスキーに背を向けて久しい。極端な左派政治性向も排斥されている。チョムスキーは赤化統一されたベトナムを道徳的体制とたたえ、キリングフィールドの虐殺劇を演じたカンボジアのクメール・ルージュ政権を「ヒューマニズムに立脚して社会革命を成し遂げた」と称賛。左派の同僚さえも当惑させた。ハーバード大学ロースクールで教授を務めた進歩性向の法学者アラン・ダーショビッツは彼のことを「事実を操作してきた悪党」と評した。

 しかし、韓国左派の間では依然として「世界的大学者」であり「時代の良心」としてたたえられている。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に終戦宣言を支持し、先月の韓米首脳のワシントン宣言についても「韓国が米国の新冷戦に参加すれば、韓半島の平和は脅かされる」と述べるくらいだから無理もない。ネロナンブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫の意で、主に民主党批判に使われる)の行動原理にも似ている。他人の子どもには行くなと言い、自分の子どもは外国語高校に行かせたのが韓国の江南左派たちの行動心理だ。「お金がなくてラーメンしか食べられなかった」と自分の貧しさを売りにしていたある国会議員が数十億ウォン(数億円)規模の仮想通貨を保有していたことが明らかになった。左派によるネロナンブルは、もはやDNAにまで組み込まれているのかもしれない。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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