「警察らしい警察」がもたらした平和【朝鮮日報コラム】

 全国民主労働組合総連盟(民主労総)がソウル都心で大規模集会を予告した先月31日午前に警察庁長主催の会議が開かれ、その席である幹部が「午後5時20分に解散命令を出し、その後機動隊は戦闘態勢で臨む」と警告した。前日に警備対策会議を主催した警察庁の尹熙根(ユン・ヒグン)庁長は「警察の役割を堂々と果たしていきたい」との決意を示したが、幹部の言葉は尹庁長が示した決意を後押しするものだった。

【フォト】世宗大路を埋め尽くす民主労総

 警察の強い決意はさまざまな現場で実際の行動として形になっている。事前に届けられた集会時間が過ぎると、警察は直ちに解散命令を3回出した。また警察上層部は組合員らが清渓川広場で不法に焼香所を設置してから1分以内に機動隊員らに無線で「撤去」と「現行犯逮捕」を命じた。その際に警察官を暴行した組合員4人が現行犯で逮捕された。

 警察の厳しい対応の結果は「平穏」だった。ソウル都心に集まった2万人の民主労総組合員らは不法集会を自ら解散した。2万人以上が8時間近く集まり集会を開いたが、警察の鎮圧で負傷し病院に担ぎ込まれた組合員はいなかった。組合員らは「暴力警察は立ち去れ」などと叫んだが、実際に暴力を振るったのは組合員の方だった。組合員らは警察に「子犬」「政権の犬」などと侮辱を続け、機動隊員らにつかみかかりながらベストを脱がそうとする様子も見られた。

 一糸乱れない対応を取るため警察は最近になって訓練に力を入れている。先月24日から6月12日まで行われた「警察庁および各市道庁警察部隊訓練」もそうだ。文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足した2017年以来、初めて強制解散の訓練が再開されたのだ。カプサイシン(唐辛子の辛味成分)を使って不法集会の参加者を取り押さえる訓練も行われた。また集会に伴う騒音が基準値の95デシベルを超えた場合、スピーカーの電源を切り、不法なステージとして使われるウイング車(荷台側面と天井が一体的に上に跳ね上がって開くバン型トラック)のけん引など、現場の状況を想定した訓練も行われた。

 これまで警察は民主労総などの不法集会に積極的な対応を取らなかった。それが尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が先月23日の国務会議(閣議に相当)で「国民の自由と基本権を侵害し、公共秩序を破壊する民主労総の集会は国民が容認し難いだろう」と述べ、不法なデモなどへの厳しい対応を求めたことで警察の態度は180度転換した。

 集会を阻止する現場の警察官も上層部の方針転換を喜んでいる。この日集会現場にいたある機動隊員によると、解散命令を3回出してもこれに応じない場合は強制解散が原則だが、つい先日まで解散命令だけで10回、20回繰り返すこともあったという。また別の機動隊員は「集会の時間や場所を守らず、警察官に暴言を吐いても我慢するしかなかったが、法律通り執行できるようになりすっきりしている」と話してくれた。

 民主労総のある組合員はこの日の集会前の演説で「政権発足から1年で民主・民生・平和が破壊され地獄の中で生活している」と訴えた。しかし不法に都心の道路をふさいで占拠し、市民の日常生活と自由を奪い、平和を破壊したのは実際は誰か明確にしなければならない。

シン・ジイン記者

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  • ▲ソウル市中区のソウル警察庁機動本部で不法集会に対応する訓練を行っているソウル警察庁機動隊。25日撮影。/ソウル警察庁

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