記者追放…インドに反撃される中国【朝鮮日報コラム】

インドの取材ビザ延長拒否で、一時14人いた中国の特派員は全員排除

追放を乱発してきた中国、「正常な交流を回復すべき」と訴える

 数年前に国境紛争でこん棒を手に乱闘まで繰り広げた中国とインド。そんな両国は最近、メディア戦争の真っ最中です。互いに取材ビザを出してやらないという手法でもって、相手国の特派員を次々と追放しています。

 インドからは、最後まで残っていた中国国営新華社通信と中国中央テレビ(CCTV)の特派員が5月までにビザ延長を認められず、追い出されたといいます。これで、インドに残る中国の記者は一人もいないとか。インド・メディアの中国特派員も、2人がビザを延長してもらえず、中国に入ることができなくなりました。残る2人も間もなく追い出されそうな状況だといいます。

 記者の追放は、もともと中国のお家芸でした。2020年、米国の記者13人を大々的に追放しました。オーストラリアとの関係が悪化したときは、中国の情報当局が乗り出して連絡してくるという手法で圧力を加え、身辺に脅威を感じた豪特派員らが次々と中国を離れるように仕向けました。そんな中国が、今度は国境紛争の相手、インドに手ひどくやられています。

 ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は5月30日、消息筋の話を引用して「インド政府が、最後に残る新華社通信とCCTV特派員のビザ延長を拒否した」と報じました。同メディアによると、インドの記者2人もビザを取り消され、中国に入ることができず、もう1人が中国当局からビザ取り消しの通知を受けたといいます。

 5月31日、中国外交部(省に相当)のブリーフィングでこの報道の真偽について質問が出ると、毛寧報道官は異例にも長々と事情説明をしました。「中国メディアの記者は随分前からインドで不公正かつ差別的な待遇を受けてきた。2017年から、何の理由もなく取材ビザの期限を3カ月から1カ月に短縮され、2020年からは特派員ビザの申請自体を受け付けない。一時は14人もいた中国のインド駐在記者の人数は1人に減り、もうすぐ1人も残らなくなる状況…」。このようにこまごま説明した上で「相互尊重の原則にのっとり、両国メディアの正常な交流が回復されることを望む」と発言しました。

 他方、インド外務省は淡々とした反応です。アリンダム・バグチ報道官は今年4月のブリーフィングで、関連の質問が出ると「中国の記者がインドでメディア活動をするのに何の困難もない」と答えました。

 新華社通信特派員のビザを延長してやらないことについても「政府のビザ政策について言及することは適切でない」として言及を避けました。まるで、何かあったのか、と問い返すかのような口ぶりでした。

■理由の説明もなく「インドを去れ」

 中国とインドは、ヒマラヤ山脈からチベット高原にかけて3800キロもの国境線で向かい合っていますが、1962年には戦争まで起こすほど国境問題で対立してきました。一時は静かだった国境紛争は、2017年にジャム・カシミール州ラダック地区のパンゴン湖において、両国軍の間で投石戦が起きたことで再び火が付きました。2020年にはラダック地区のガルワン渓谷でこん棒などを使った衝突が発生し、双方合わせて十数人が死亡するという事件が起きました。

 メディア戦争も、この国境紛争の延長線上にあります。2016年、インド政府は「メディアの範囲を超える否定的動向が情報当局によって捕捉された」という理由で、ニューデリー支局長とムンバイ支局長を含む3人の新華社通信記者を追放しました。2021年12月には中国グローバル・テレビ・ネットワーク(CGTN)の記者が、ビザ有効期限を2カ月残した状態で、何の理由説明もなく「10日以内にインドを去れ」という通知を受けたといいます。

 一時は14人もいたインド国内の中国記者の数は、今年の初めの時点で2人に減り、その残る2人さえもビザ延長が拒否されたのです。最後に残った新華社通信記者には「インドに滞在して6年にもなる」という理由でビザ延長を拒否し「3月31日までにインドを去れ」と通知したといいます。

 中国も対抗しました。インドの有名日刊紙「ザ・ヒンドゥー」北京特派員は、個人的な用件で帰国しましたが、3月31日に北京へ戻ったところ、空港で中国当局者と30分面談した後、そのまま追放されました。

■中国、2020年には米国記者13人を追放

 実のところ中国とインド、どちらも言論の自由とは遠く隔たった国ではあります。「国境なき記者団」が発表した今年の言論自由指数を見ると、インドは161位、中国は179位です。

 中国の人民日報や新華社通信、CCTVなどは、共産党中央宣伝部が管理する宣伝機関に近いといえます。人民日報は共産党の機関紙で、環球時報はその傘下にある国際ニュース専門の商業日刊紙です。新華社通信やCCTVなどは国務院(内閣に相当)直属の機関で、責任者は閣僚級なので閣僚級機関とも呼ばれます。英字紙チャイナ・デイリーは国務院直属の次官級機関で、解放日報は共産党上海市委員会の機関紙です。

 2020年に中国が米国記者13人を追放したのも、この問題と関連があります。米国当局が中国国営メディアを報道機関とは認めず、外交使節団に指定して規制すると、中国はそれに対する報復として米国記者を大挙追放したのです。

 インドは国境紛争の後、外交攻勢の手綱を緩めていません。ティックトック、ウィーチャットなど中国の携帯電話アプリの使用を大々的に禁じ、第5世代(5G)通信事業からもファーウェイやZTEなど中国の業者を排除しました。中国けん制のため米国が主導する4カ国安全保障協議体「クアッド(QUAD)」にも参加しました。ネルー大学のシュリカント・コンダパリ教授は、WSJのインタビューで「ボールは中国側にある」として「関係改善を望むのであれば、中国は占領地を明け渡すべき」と語りました。

崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長

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