国情院が国内情報機能を失ったのは自業自得という側面が強い。代々の政権で「政治介入」論争が起きた。政府部処(省庁に相当)の情報を集めるといって公務員の弱みを探し、経済情報をやるといって各企業に圧力を加えることもあった。今の国情院は、北朝鮮やテロ・サイバー・国際犯罪など海外情報だけを扱うことができる。国家情報院ならぬ海外情報院というわけだ。英国はMI5(SS。国内)とMI6(SIS。海外)に情報機関を分離している。米国は、海外情報はCIA、国内はFBIが主導するが、DNI(国家情報長官)が16の情報機関を総括する構造だ。主要国の中で、情報機関の国内情報機能を無くしたのは韓国が唯一。今、韓国の国内情報の大部分は警察が担当しているが、「犯罪情報」であるケースが多い。国内外の情報を総合して分析し、尿素水やワクチン騒動のような事態を未然に防ぐ「予防情報」活動は、今では誰がやっているのか。
「対共捜査権」は、尻に火が付いた状態だ。来年1月1日から、国情院はスパイを捕まえることができない。「今でもスパイがいるのか」と思うが、実はいる。最近、北朝鮮とつながっている疑いが明らかになった民労総(全国民主労働組合総連盟)出身者の国家保安法違反事件などは、2016年から国情院が追跡してきた。海外支部の情報と国内の対共捜査局の経験が結び付いていたから可能だった。韓国警察が国情院のようにスパイを捕まえることができるだろうか。
最近、国情院は内部人事の問題で苦しんでいる。誰が1級公務員に任命されるかより、前政権で「北朝鮮交渉局」と化したような情報機関の機能と役割を復元することの方が重要だ。国情院法上、政治に関与した人物は7年以下の懲役となる。未遂犯まで処罰される。上官の指示だからと政治情報収集をしたら監獄送りになることを、国情院の職員はよく知っている。国情院に頼れないなら、主要国のように国内外の情報を分離して、これを総合して判断する組織をつくることも検討すべきだ。今、韓国の情報機関は半分が欠けてしまった存在だ。
アン・ヨンヒョン社会政策部長