着弾してできた穴にドンピシャ着弾…驚異的な精度を誇る韓国産「長射程砲キラー」ミサイル

　韓国の首都圏を脅かす北朝鮮の長射程砲の脅威に対応して韓国軍当局が開発した韓国型戦術地対地ミサイル（KTSSM）2発が、120キロ以上離れた標的に連続して正確に命中する様子を捉えた動画が公開された。1発目のミサイルが、標的からわずか1－2メートルしか離れていない場所に落ちて穴を開けると、2発目のミサイルがこの穴の中に正確に落ちるという、一種の「ホールインワン」を記録したのだ。

【動画】ホールインワン達成？　韓国産「長射程砲キラー」ミサイル、着弾してできた穴に着弾

　射程120キロ以上の地対地弾道ミサイルが、このように連続して全く同じ場所に命中するのは、世界的にもなかなか例が見当たらないケースで、KTSSMの驚くべき精度が注目を集めている。国防技術品質院が今年5月に実施して、後に公開したKTSSM品質認証射撃試験の動画によると、2発のKTSSMが1－2秒間隔で連続して発射された後、同じ標的に向かった。

　1発目のミサイルは、標的の旗からわずか1－2メートルしか離れていないところに落ち、穴を開けた。続いてすぐさま落下してきた2発目のミサイルが、その穴の中へ正確に落ちた。2発のミサイルはどちらも実弾は積んでおらず、弾頭が爆発することはなかった。

　KTSSMは、DMZ（非武装地帯）付近から韓国首都圏を脅かす北朝鮮の長射程砲の坑道陣地を打撃するために開発され、「長射程砲キラー」と呼ばれる。射程は180キロで、軍用GPS（衛星利用測位システム）のほか精密な誘導装置を備えて精度に優れているのが特徴だ。北の坑道陣地の上に落ちて貫通し、内部でサーモバリック弾頭がさく裂して坑道陣地を無力化する。長さは4メートル、直径は北朝鮮の超大型放射砲（多連装ロケット砲）と同じ600ミリで、1発当たりの価格は8億ウォン（現在のレートで約8700万円。以下同じ）だ。

　先に国防科学研究所（ADD）は2020年、KTSSMが海上の標的の真ん中に「ホールインワン」するかのように正確に命中する写真をホームページ上で公開し、話題になった。韓国軍の消息筋は「ミサイルはあまりにも正確に標的へ命中し、見守っていた研究員らもびっくりした」と伝えた。こうしたKTSSMの精度に、ネットユーザーらは「動画は合成されたものなんじゃないか。ミサイルがあまりに正確で、信じがたいほど」「たたいた上にまたたたいて、あまりに『残酷』なんじゃないか（笑）」とコメントを付けて驚きを表現した。

　北朝鮮は2017年5月、スカッドミサイルを改良した新型ミサイルを東海の海上に向けて発射し、450キロ離れた標的に7メートル以内の精度で命中させたと主張した。韓国軍の消息筋は「KTSSMは北朝鮮の旧型ミサイルはもちろん、新型弾道ミサイルに比べてもはるかに優れた精度を持つ」と語った。

　通常、ミサイルの精度は弾道ミサイルの方が巡航ミサイルより劣る。主な戦争で欠かさず使われてきた米国のトマホーク巡航ミサイル（最大射程1600－2500キロ）や、韓国の玄武3巡航ミサイル（最大射程1000－1500キロ）の精度は3メートルほどだ。最大射程が300キロから800キロの玄武2弾道ミサイルの精度は5メートルほどで、巡航ミサイルより低い。だがKTSSMは、弾道ミサイルなのに標的とのズレはわずか1－2メートルだといわれている。

　韓国軍当局は、KTSSMの最大射程を300キロに伸ばしたKTSSM-IIも開発中だ。KTSSM-IIは平壌以北、鴨緑江付近の地域にある北朝鮮の地下バンカー（掩蔽壕〈えんぺいごう〉）も破壊できる。また、固定発射台を用いるKTSSMと違ってKTSSM-IIは「天舞」多連装ロケットのランチャーに2発搭載することができ、機動性も高い。

　ポーランドも、「天舞」多連装ロケットと共にKTSSM-IIと同様の射程290キロのミサイルを導入する予定だ。韓国軍の消息筋は「KTSSM-IIとポーランド輸出型ミサイルとの間には、弾頭の性格や威力などに多少差があるらしい」と語った。昨年12月には忠清南道泰安のADD安興試験場で、ポーランドをはじめノルウェー、エジプト、スウェーデン、アラブ首長国連邦（UAE）、フィリピンなど7カ国の軍・防衛産業関係者およそ50人が参観する中、「天舞」発射車両に搭載された改良型KTSSMが200キロ以上離れた標的への命中に成功した。

　韓国軍当局は当初、総額1兆5600億ウォン（約1700億円）を投じて2034年までにKTSSM-IIの開発および配備を完了する予定だった。しかし北朝鮮の核ミサイルの脅威が高度化しているのに伴い、その時期を2030年以内に前倒しすることにしたという。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者