8月4日で発足から2カ月となる李在明(イ・ジェミョン)政権が、韓米同盟を根幹とするものの中国・ロシアとも関係を管理したいという、いわゆる「実用外交」を掲げる中で、大統領室と外交部(省に相当)の主な発表から「インド太平洋(Indo-Pacific)」という単語が事実上姿を消してしまい、その背景に関心が集まっている。故・安倍晋三元首相が初めて提案し、ドナルド・トランプ大統領が採択したこの単語は、米国と友邦国が太平洋とインド洋で協力して中国の覇権主義、海上進出をけん制しようという概念(封じ込め)が下敷きになっている。カウンターパート国が「韓国はインド太平洋地域のパートナー」と言及する一方、韓国政府は報道資料などでこれに言及しないケースがほとんどで、米国の朝野では、李在明政権が、インド太平洋戦略まで発表した前政権の基調をどういったトーンで、どの程度まで継承するのかに相当な関心を持っている。
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こうした基調が最も顕著に現れているのが、カナダとの2国間関係だ。カナダは、2022年に当時の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が発表したインド太平洋戦略において「北太平洋(Northern Pacific)」国に分類された後、韓国との関係がいっそう密接になった。この時期にカナダ大使(2022年10月-25年6月)を務めた人物が、任雄淳(イム・ウンスン)国家安保室第1次長。李在明大統領は6月のG7(先進7カ国)首脳会議でマーク・カーニー首相と首脳会談を行ったが、カナダ首相府は「自由で開かれたインド太平洋(Free and Open Indo-Pacific)に対する支持を確認した」と発表した一方、韓国政府の報道資料では関連の内容が省略されていた。「自由で開かれたインド太平洋」は、台湾海峡はもちろん南シナ海・東シナ海、さらには西海で違法な海上領有権を主張している中国をけん制する際に登場するおなじみの表現だ。進歩(革新)系の与党「共に民主党」に所属する金炳周(キム・ビョンジュ)議員など、李大統領の特使が7月22日・23日にカナダを訪問した際も、カナダ外務省が「両国はインド太平洋地域の戦略的パートナーとして協力を深化することにした」と発表したのに対し、韓国外交部の報道資料ではインド太平洋に関する言及が一つもなかった。