韓国で今年6月に3つの事件について設置された特別検察官(特検)が請求した逮捕状の棄却率が平均で47.9%に達している。3つの事件とは尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の非常戒厳に関連した内乱事件(内乱特検)、尹前大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡る一連の疑惑(金建希特検)、海兵殉職事故の捜査に対する外圧疑惑(海兵特検)を指す。
3件の特検はこれまでに計48件の逮捕状を請求し、うち23件が裁判所に棄却された。昨年1年間に検察が請求した逮捕状の棄却率(22.9%)を2倍以上上回った。
内訳を見ると、内乱特検が請求13件のうち6件、金建希特検は25件のうち8件、海兵特検は10件のうち9件がそれぞれ棄却された。内乱・海兵特検は特定の被疑者に対し、逮捕状を2回請求したが、いずれも棄却された。裁判所関係者は「強盗や殺人など物証が明確な犯罪は逮捕状請求の棄却率が極めて低いので、刑事事件全体の棄却率が特検より低く見えるのかもしれない」とし、「棄却率よりも棄却理由を見ると、特検による捜査の問題点が見えてくる」と話した。
3件の特検が請求した逮捕状に関する裁判所の棄却理由は、大半が「事実関係を争う余地がある」「逮捕するほど容疑が疎明されていない」というものだった。逮捕するか否かは、通常事案の重大性と証拠隠滅および逃走の恐れを基準に判断する。特検の逮捕状請求は、裁判所で捜査が不十分だという指摘されたことになる。法曹界からは「特検は逮捕を捜査の成果と考えたり、被疑者に対する圧迫手段として使おうとしたりした結果、容疑をしっかり立証できないまま、性急に令状を請求したのではないか」と受け止めている。
内乱特検は朴性載(パク・ソンジェ)元法務部長官について、違法な非常戒厳に加担した容疑などで2回逮捕状を請求したが、裁判所は「これまでの(容疑の)疎明程度などを考えると、不拘束捜査の原則が優先される」として棄却した。不拘束捜査の原則とは、被疑者の自由を尊重し、身柄を拘束しない任意捜査 を優先すべきという考え方だ。内乱特検はまた、国会の戒厳解除決議を妨害した容疑で、国民の力の秋慶鎬(チュ・ギョンホ)国会議員について、尹前大統領との共謀関係も明示しないままで逮捕状を請求して棄却された。
海兵特検は今年7月、「捜査外圧」の疑いが浮上した金桂煥(キム・ゲファン)元海兵隊司令官の逮捕状を請求する際、パク・チョンフン大領(大佐)の抗命罪を巡る裁判で偽証を行ったという別件で逮捕状を請求して棄却された。海兵特検は今年10月、職権乱用の疑いで再び金元司令官の逮捕状を請求したが、裁判所は「法理的に争う余地がある」としてまたも棄却した。金建希特検は金建希氏の側近キム・イェソン氏が関与するIMSモビリティーが大企業から特別優遇で投資を受けたという疑惑を捜査したが、関連者の大部分の逮捕状を金建希氏とは関係がない横領・背任など別件で請求して棄却された。