今年7月、カナダから韓国へ来た観光客が、仁川国際空港からコールバン(ワゴンタクシー)に乗って江原道太白市へ行こうとした。運転手は太白までの最短距離が286キロであるにもかかわらず、その道ではなく、江陵市を経由して430キロも走行し、70万ウォン(約6万6000円)を請求した。外国人に対する「ぼったくり」の一つの手口である「迂回運転」だ。仁川空港から太白までの基準となるタクシー料金は30万ウォン(約2万8000円)程度だが、中国行きの飛行機の料金よりも多額の金をせびり取ったというわけだ。通報を受けた警察は、運転手を詐欺容疑で立件した。

 韓国を訪れる外国人が空港からの交通手段としてよく利用するのがコールバンだ。俗に「ミニバン」と呼ばれる小型のワゴン車で、多くの荷物を積むことができ、6人まで乗れるのが利点だ。コールバンは2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)韓日大会の前年、韓国政府が多くの荷物を運ぶ外国人の利便性向上を目的に導入した。だが、一般のタクシーのようなメーターではなく、乗客と運転手が交渉して料金を決める仕組みにしたのが問題だった。コールバンは当初1万5000台程度だったが、新規の営業許可を制限し、現在は約3700台となっている。

 今年7月に10日間韓国を訪れたオーストラリア人観光客も、悪徳運転手の被害に遭った。この観光客は、仁川空港からソウル・鍾路にあるホテルまでコールバンを利用した。運転手はコールバンでは禁止されているメーターを取り付け、途中で11万ウォン(約1万円)の領収証を出した上、ホテル到着後にさらに12万5000ウォン(約1万2000円)の領収証を出した。適正な料金である8万5000ウォン(約8000円)の3倍近い23万5000ウォン(約2万2000円)を請求したのだ。オーストラリア人観光客は料金を支払った後、不審に思ってホテルの従業員に話した。ホテルから連絡を受けたソウル市は、料金所やホテルの監視カメラの映像を調べ、3日後に運転手を検挙した。運転手は違法なメーターを取り付けただけでなく、コールバンの運行に必要な貨物運送資格もなかったという。

 ここまではよく聞くぼったくりのケースだが、ソウル市が料金の差額15万ウォン(約1万4000円)を運転手から回収し、オーストラリア人観光客に返そうとしたことで、違った展開を見せた。観光客は「このお金を受け取ろうとは思わない。障害を持つ子どものために寄付してくれればいい」と断った。これを受け、ソウル市は15万ウォンを社会福祉共同募金会に寄付した。

 タクシーやコールバンによる外国人に対するぼったくり行為は、幾ら取り締まっても氷山の一角にすぎない。市外割増料金を適用して支払いを強要したり、わざと回り道したりするのが、よくある手口だ。「0」を1個付け足し、約60万ウォン(約5万4000円)を請求したタクシー運転手もいた。今年に入り、ソウル市が取り締まった分だけで85件に達する。韓国人も、外国の空港からタクシーに乗って、このような目に遭ったら、その国に行きたくなくなるだろう。前述のオーストラリア人観光客がどんな気持ちで、差額の返金を断ったのだろうか。運転手を摘発して、金を返そうとした当局に感謝したのか。それとも、韓国の観光客に対する恥ずべき行為への警告だったのか。オーストラリア人観光客は私たちに二度恥をかかせたのだ。

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