千葉県柏市のJR柏駅から10分ほど歩くと、「豊四季台」という住宅団地に着く。ここでは、お年寄りたちがあちこちでタイヤの付いた歩行補助機具を利用し、つえを突いて歩く姿を見掛ける。団地の真ん中には病院や大手スーパーマーケットのようなサービス施設が配置されている。大手スーパーに入ると店員も顧客もほとんどがお年寄りだった。カートに魚を乗せて棚に陳列していた店員のカワゴエさん(85)は「1週間に3回、5時間ずつ働くのが生活の活力要素となっている。仕事自体が運動になって、お客さんとして来店した友人に会うのも楽しい」と笑みを浮かべる。

 日本は、2012年から高齢化時代の新たな都市モデルとして「医職住の近隣化プロジェクト」を掲げ、現在全国4都市で実験的に実施している。これは、医療やお年寄りのための福祉施設、マンションなどの共同住宅、お年寄りのための職場などを1カ所に集中して配置することをいう。特に医療や福祉施設をお年寄りたちが手軽に利用できるように都市機能を再編するのがメインとなる。豊四季台団地はその一つだ。

 一方、韓国はいまだに越えるべき壁が多い。今年から65歳以上の人口が全人口の14%を超え、高齢化社会(7%以上)から「高齢社会」に突入しようとしているにもかかわらず、こうした都市計画に対する政府レベルの試み自体が存在していない。

■働き口と病院は5分以内

 豊四季台団地を他の言葉で表現するならば「お年寄りのための国」と言えるだろう。1964年当初、32万6000平方メートルの敷地に103棟4666世帯が入居する団地として建設され、今では衣・職・住の近隣化プロジェクトに合わせ、再開発が進められている。再開発が完了した1432世帯に占めるお年寄りの割合は41.4%だ。柏市全体に占めるお年寄りの割合(20%)の2倍以上となる。

 再開発は、計画段階から医療や高齢者福祉の専門家たちが参加して、お年寄りの立場から利便性を追求する方向で話し合いが進められた。目的は、年を取って病気になった後、不慣れな場所に移動して入所や入院を繰り返すのではなく「働きながら住み慣れた土地でそのまま年を取り、治療を受けながら、心地良く余生を過ごすことができるようにすること」だ。

 ひとまず全ての住宅は、お年寄りに優しいことをモットーに設計された。壁面に手すりを設置し、ドアが広く、室内には敷居がない。団地の周囲には働き口があって、団地に入居するスーパーマーケットや保育園、療養施設などの商業施設では、決まった割合のお年寄りを雇用するよう義務付けられている。約230人のお年寄りが団地内の施設でパートタイマーとして働いている。体が健康なお年寄りたちが軽い労動を通じて経済的に自立することができるようにしたのだ。

 また、余暇を楽しむプログラムも設けられている。健康維持のために週1回集まって、約5.5キロメートルになる町内を一周する「散歩プログラム」が進められているほか、運動器具を利用して筋力を高める「健康リハビリの集い」も運営されている。

 周囲が約5.5キロメートルの団地の真ん中に建てられているのは6階建ての病院だ。団地内で最も遠い所に住むお年寄りも歩いて10分の距離だ。1階には内科や小児科、薬局、訪問看護ステーションが入居しており、2-5階は療養病室となっている。日本の政府は、豊四季台のような医・職・住の近隣化モデルを全国に拡大していく方針だ。

■歩いて5分以内の病院、韓国には6%、日本には32%

 2026年に超高齢社会(高齢者の占める割合が20%以上)に突入する韓国はどうだろうか。豊四季台のように、政府が低所得層のために運営する公共シルバー住宅は、慰礼新都市など全国に2団地、294世帯にすぎない。

 それさえも室内に安全装置が整った「高齢者向け住宅」にとどまっており、団地や都市計画レベルでの高齢者政策は事実上、皆無に等しい。国土交通部(省に相当)の関係者は「実は賃貸住宅政策も青年や新婚夫婦が中心で、お年寄りのためだけの公共賃貸住宅はまだ存在していない。各種の賃貸住宅を10%ほど高齢者のために供給するにとどまっており、高齢者の立場に立った病院配置などの団地や都市計画レベルでのアプローチは、率直に言ってまだ進んでいない」と説明する。

 統計からも、このような現実は読み取れる。保健福祉部が2014年に全国の65歳以上のお年寄り1万人を対象にアンケート調査を行った結果、「病院や保健所が歩いて5分未満」と回答したお年寄りの割合はわずか6.3%だった。範囲を「10分以内」にまで拡大すると35.1%になった。一方、日本のお年寄りは男性を基準に徒歩3分の「250メートル以内」が32.5%、「500メートル以内」にまで広げると実に60%となった。15分以上かかる「1キロメートル以上」は18.8%にすぎなかった。

 建国大学のシム・ギョオン教授は「こうしたお年寄りの福祉住居施設を整備する作業は、長期的に見ると医療費や追加の福祉財政負担を減らすことができるといった点で、効率的な政策でもある」と説明した。

 

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