文在寅(ムン・ジェイン)大統領の息子ムン・ジュンヨン氏がソウル市から「新型コロナウイルス被害緊急芸術支援金」1400万ウォン(約130万円)を受給した。個展準備がその名目だった。以前から準備していた展示会が3件中止となり、損害が大きかったとも言った。ジュンヨン氏は今月17日から1週間、ソウルで個展を開いている。

 ジュンヨン氏が「視覚芸術」分野で被害を訴え、支援金を申請した時、同氏と共に合計281件の申請があった。このうちジュンヨン氏をはじめ46組だけが支援金を受け取ることになった。支援が受けられたのは6組に1組の割合だということだ。ジュンヨン氏が受け取った支援金はその中でも最高額だった。具体的にどのような基準で選ばれたのかは分からない。ジュンヨン氏は「(展示)計画を審査し、きちんと使える人を選んだということ」と言った。青瓦台側は「個人の資格で申請したものまで何だと言うことはできないではないか」と言った。

 ジュンヨン氏の個展が開催されているギャラリーは文大統領の小学校の同級生が経営している。ソウルのど真ん中で個展を開くことは、普通のアーティストにとってはなかなかない機会だ。ジュンヨン氏の作品は最高で5万ドル(約520万円)の値が付けられている。文大統領の娘ムン・ダヘさんもここで2年間、アシスタント・キュレーターをしていた。このギャラリーの代表は「ジュンヨン氏とは大学卒業時からアーティスト的な姿勢などについてアドバイスして関係を結んできた。今回の個展開催は大統領との親交によるものではない」と言った。国民がこの言葉をそのまま信じると思って話しているわけではないことだろう。

 これまでもジュンヨン氏の展示会があるたびに特別扱い問題が起こっていた。2017年の錦湖美術館メディアアート展、2018年の平昌冬季五輪メディアアート展、今年のパラダイス文化財団ART LABフェスティバルなどをめぐって、いろいろささやかれた。ひっそりとした地方の美術館にもジュンヨン氏の作品が展示された。ジュンヨン氏の雇用情報院特恵採用疑惑も解消されていない。

 ジュンヨン氏はそうした疑惑が伝えられるたびに「悔しい」と言う。しかし、多くの国民は大統領の息子の相次ぐ成功と幸運が純然たる実力によるものなのか疑問を抱いている。大統領の娘が突然海外に移住した理由もまだ明らかになっていない。移住を手助けしたと見られている企業関係者は与党公認で国会議員になった。この人物に対する捜査はしているのか、していないのか、知る由もない。大統領の家族の身の振り方は決して容易ではない。新型コロナ支援金は、展示が中止となって困窮している芸術家たちに対し、国民の税金を使って支援するものだ。大統領の息子がその支援金をもらわなければならないのか、問いたださずにはいられない。

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