北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)氏が、韓国国防部(省に相当)の長官の「先制攻撃」発言を非難しつつ「(北は)南朝鮮を狙って銃砲弾の1発も撃たない」と主張した。「互いに戦ってはならない同じ民族」だとも述べた。北朝鮮の主敵は「南朝鮮ではなく戦争そのもの」という詭弁(きべん)まで使った。

 

 2010年、北朝鮮潜水艇からの魚雷攻撃で韓国海軍の哨戒艦「天安」が爆沈し、将兵46人が死亡した。しかも、救助任務を遂行していた韓国海軍の軍人1人と救助に参加していた民間人9人も死亡するという惨事だった。「天安」攻撃は、09年に北朝鮮政権の後継者に内定した金正恩(キム・ジョンウン)氏が、世襲の地位を固めようとして敢行した軍事挑発だった。10年9月に後継者として公式に登場した金正恩氏は、その2カ月後に延坪島砲撃まで起こし、韓国の海兵隊員2人と民間人2人の命を奪った。北の銃砲弾で、2010年だけでも韓国国民50人が犠牲になった。金正日(キム・ジョンイル)が17年統治する間に殺された韓国国民の数よりも多い。

 2年前、北朝鮮軍は西海で溺れて疲労困憊(こんぱい)していた韓国の公務員に向けて銃を乱射し、遺体を焼くということまで行った。その時間、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は眠っていて知らなかったという。19年に金正恩氏は、延坪島砲撃9周忌に西海NLL(北方限界線)近くの昌麟島の部隊を訪問し、砲撃も指示した。韓国の領土を再び攻撃できるという脅迫だった。北朝鮮軍の撃った高射機関銃弾4発が、韓国軍のGP(監視哨所)に狙ったかのように命中したこともあった。最近北が相次いで発射した新型弾道ミサイルは、全て韓国を狙ったものだ。金正恩氏は「南朝鮮に送る警告」だと言った。

 今、北朝鮮で金正恩きょうだいに次ぐ権力者は金英哲(キム・ヨンチョル)労働党統一戦線部長だという。金正恩氏は、軍部で次々と粛清を行いながらも金英哲氏は重用し続けている。その理由は、2010年に金英哲氏が偵察総局長として「天安」爆沈と延坪島砲撃などを主導したことを高く評価しているからだ。現在も対南工作を総括する金英哲氏は、一昨年「対南事業を徹底して対敵事業へと転換する」と発言した。第2の「天安」・延坪島攻撃を用意しているのだろう。こんな金与正氏と金正恩氏を、文政権は国賓並みにもてなした。政権の中心人物らが、自ら「金与正ファンクラブ会長」のごとく振る舞うこともあった。彼らも「撃たないだろう」という金与正氏の言葉がうそだということは知っているのだ。

 金与正氏は5日、「南朝鮮が軍事的対決を選択したら、われわれの核武力は任務を遂行しなければならない」と主張した。金氏一家が直接「対南核攻撃」の脅迫を始めたのだ。これが、北が30年以上にわたって住民経済を放棄し、核開発に取り組んできた真の理由だ。金正恩氏は既に、実戦で使える「戦術核」開発も指示した。7回目の核実験も準備中だ。韓国政府も韓国国民も、むなしい幻想を捨てて外交的・軍事的に備えなければならない。

ホーム TOP