「7億ドル(約1015億円)の男」大谷翔平=ロサンゼルス・ドジャース=の人気が沸騰する中、彼に対する期待も大きく膨らんでいる。今やその視線は大谷が生み出す経済的効果や野球人気復活の可否にも注がれている。

 米ブルームバーグ通信は20日(現地時間)、「大谷セリング:最高の野球の才能はスポーツを変化させることができるか?」という見出しの記事で、ドジャースが大谷に莫大(ばくだい)な金額を投資した理由と、米大リーグ(MLB)が彼にかける期待について分析した。ブルームバーグは「MLBでこの数年間、これほど関心を集める選手がいなかったのはもちろん、全世界で熱烈な信奉者を従えた選手もいなかった。MLBの課題はこうした情熱を活用して大谷ファンを野球ファンに転換することだ」と伝えた。

 野球は米国でかつて最も人気のあるスポーツだったが、現在は米プロフットボール(NFL)や米プロバスケットボール(NBA)の人気に圧倒されている。最近の米ワールドシリーズのテレビ視聴率は最高だった時の数字より約80%もダウンしている。「試合時間があまりにも長いことが原因だ」と指摘されているが、ブルームバーグは「野球の試合運びの遅さは(ショート動画交流サイト〈SNS〉)TikTok(ティックトック)全体を視聴する忍耐力のない若い世代にとって魅力的ではない」と評している。

 しかし、「退屈さよりも大きな問題は、マーケティングにふさわしいスターがいなかったことだ」とブルームバーグは伝えた。サッカーのリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド、ゴルフのタイガー・ウッズのように、そのスポーツの代名詞と評される人物が野球にはこれまでいなかったということだ。そこで、「MLBの課題は大谷を通じて野球を再び人気スポーツにすることだ」とブルームバーグは言う。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は「野球がスポーツ界でシェアを回復できる最高のチャンス。我々の目標は世界で最も人気のあるスポーツになることだ」と語った。

 大谷が生み出す経済的効果も注目されている。一部で大谷は「野球界のテイラー・スウィフト」と呼ばれている。人気歌手テイラー・スウィフトはコンサートをするたびに観客が大勢集まり、サービス業の売上向上に貢献するからだ。業界では、昨年のスウィフトの公演により米国では50億ドルの経済効果があったという分析もある。

 既に一部のメディアでは、ドジャースが大谷によって得る財政的利益について報道している。米紙ロサンゼルス・タイムズは「10億ドルの利益? 大谷翔平の契約はどのようにしてドジャースをMLBの金融王にしたのか」という見出しの記事で、ドジャースは大谷を通じて年間5000万ドルのマーケティング・広告収益を得ると見込んだ。そして、「大谷が契約総額7億ドルの97%に当たる6億8000万ドルを10年後から受け取ることにしたという契約条件は、チームにさらに大きな利益をもたらすだろう」と分析した。6億8000万ドルを資本市場に投資すれば、年10%の複利なら10年後には約17億ドルに増える可能性があるということだ。

 ホームゲームのチケットは既にプレミアム付きの価格で取り引きされている。ブルームバーグによると、ドジャースのホームゲームのリセール(再販)チケット価格は10%以上も上がっており、全売上枚数も3倍以上増えたとのことだ。

 「ただし、MLBの情熱はさておき、野球のPR大使役を買って出る意向が大谷にあるかどうかは不明だ」とブルームバーグは書いている。大谷はこれまで、自らのことをアピールするよりも、野球に打ち込む様子が多く見られてきたからだ。大谷はインタビューをあまりせず、SNS投稿もあまりしない。ブルームバーグは「このような傾向のため、大谷は米国で過ごしたこの6年間、ほとんど無名に近かった」と説明した。大谷が先日、結婚を発表した時も、妻の名前を明らかにすることを拒否し、メディアに「(妻は)普通の日本人の方です」とだけ話していた。

キム・ヒョソン記者

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