▲中国が「養殖場の管理と支援用施設」と主張する構造物。/韓国海洋科学技術院

 中国が西海暫定水域(PMZ)に無断設置した半潜水型の大型鉄製構造物に成人男性とみられる5人の姿が確認された。この構造物には高速艇、潜水服、酸素ボンベなど複数の海洋装備があることも分かった。

【写真】管理担当者とみられる5人の姿が見える中国の不法構造物「深藍2号」

 韓国海洋警察庁が与党・共に民主党の李炳鎮(イ・ビョンジン)議員事務所に提出した資料によると、韓国海洋警察は今年8月、中国が「深藍2号」と呼ぶこの鉄製構造物に施設の管理担当者とみられる5人の男性が立っている様子を確認したという。

 PMZは西海で韓国と中国の排他的経済水域が重なる海域で、境界線の確定は先送りされている。これは2001年に締結された韓中漁業協定で取り決められ、今も漁業活動以外の活動や施設の設置は禁止だ。しかし中国は韓国側に事前に一切の説明もなくPMZに三つの構造物を一方的に設置した。

 中国はこれら構造物について「ハイテク技術を使った新型の養殖施設」と主張しているが、これに対して韓国政府は「この説明は表向きで、実際は西海の制海権を確保する目的のいわゆる『海上工程戦略』の一つではないか」と疑っている。

■西海を自国の領海とする狙いを持つ中国

 今回写真が公開された深藍2号は円形に近い八角形の鉄製で、中央には円筒が設置されている。全体の直径は700メートル、高さは71メートルに達する。中国は同じ形態の深藍1号を2018年に設置し、深藍2号は昨年5月に設置した。22年には石油ボーリング船を改造した縦80メートル、横100メートル、高さ50メートルの海底固定式鉄製構造物をPMZに設置した。固定構造物にはヘリポートも確認されているが、中国はこれについて「深藍1号と2号の管理施設」と主張している。

 韓国政府はこれらの施設から汚染物質などが排出されていないか確認するため、今年2月に海洋調査船オンヌリ号を現場海域に送った。PMZでの海洋・海底環境調査目的の正当な対応だった。しかし中国は韓国の調査船を追跡・監視するため、中国海警局艦艇2隻とゴムボート3隻でオンヌリ号の航行と調査活動を妨害した。ゴムボート2隻にはそれぞれ2人ずつ乗船し、凶器を持ってオンヌリ号を脅迫した。そのため韓国海洋警察が現場に向かい中国海警局と対峙(たいじ)する事態になった。航行の自由が保障されたPMZに大型構造物を設置し、韓国の船舶を制止する中国の行為は国際法違反の可能性が高いとの指摘も相次いでいる。

 事態の深刻化を受け韓国政府は今年4月と7月の2回、外交ルートを通じて中国政府にこれら施設を全てPMZ外に移すよう要求したが、中国は今もこれを拒否している。韓国のある外交筋によると、中国政府は三つの構造物について「全て民間企業が養殖目的で設置した」「政府は介入できない」という趣旨の回答を伝えてきたという。

 しかし中国は一党独裁体制であり、外交問題を起こす民間企業の活動を制止できないという説明には説得力がない。国家情報院(韓国の情報機関)のある幹部は「民間企業の活動という口実で、中国はPMZから構造物を撤去する考えがないことを事実上明確にした」「中国特有の「慢慢的(のろのろした)」戦法で、構造物を固定する期間を少しずつ長期化し、韓国の主権意識を弱める狙いだ」と指摘した。韓国軍の情報担当部署によると、中国は2-3年前からPMZや離於島周辺海域などに13の大型ブイを設置してきた。これらのブイは南シナ海から西海に抜ける海洋ルートに集中的に設置されているという。中国は今年上半期にPMZで最新鋭空母による艦載機離着陸訓練も実施した。

 李炳鎮議員は「中国の西海不法構造物は単なる養殖施設ではない。南シナ海と同じく西海を内海にする狙いがあると考えられるので、海洋主権を守る対抗措置に乗り出す機会を逃してはならない」と指摘した。李炳鎮議員は先日提出された補正予算案に中国に対抗する構造物設置費用として605億ウォン(約64億円)を入れるよう求めたが、受け入れられなかった。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者

ホーム TOP