▲中国が西海の暫定措置水域(PMZ)に設置した海底固定構造物。韓国海洋科学技術院の海洋調査船「オンヌリ号」が現場の調査中に撮影した。3本の鉄骨製の柱が設置され、縦80メートル、横100メートルの船体を支えている。中国はこれを「養殖場の管理と支援用施設」と主張している。/韓国海洋科学技術院、国民の力の厳泰永(オム・テヨン)議員

 海洋問題の懸案について話し合う韓国と中国の会議が先日開催され、その席で中国が西海に設置した構造物に対して韓国側が抗議したところ、中国側から「それなら韓国の離於島海洋基地は何だ?」と問い返されたことが25日までに分かった。漁業以外の活動を禁じた暫定措置水域(PMZ)に中国が不法に固定構造物を設置したことが問題だが、これに中国はPMZの外にある離於島を持ち出して反論してきたのだ。中国による離於島紛争化の動きはこれまでも何度かあったが、これをPMZの構造物と関連付けて同じ交渉テーブルに載せてくるのは今回が初めてだ。外交関係者の間では「問題の本質をずらす意図がある」との指摘が相次いでいる。

【図】排他的経済水域巡る韓中の主張

 韓国外交部(省に相当、以下同じ)によると、今月23日にソウル市内で開かれた第3次韓中海洋協力対話で、韓国政府は最近問題になっている中国の三つの構造物をPMZの外に移動させるよう要求した。これに対して中国側首席代表の洪亮・中国外交部辺界海洋事務局長は構造物移転要求に難色を示した上で、離於島に言及したという。洪亮局長は「離於島は(中国式の)固定施設ではないのか」と問いただした上で「離於島は中国東方の童島(海礁島)から247キロ(約133カイリ)で、中国の排他的経済水域(EEZ)内にある」と主張した。中国の構造物に問題があるなら、離於島の基地設置も許されないという論理のようだ。

 中国は西海PMZの固定構造物問題に離於島基地を持ち出して反論してきたが、これについて韓国政府は「問題の本質をずらす意図がある」と分析している。中国の固定構造物は両国の合意で漁業活動のみ認められるPMZに設置されたため「不法」と考えられるが、離於島基地はこれと関係ないからだ。

 PMZは2001年の韓中漁業協定締結の際に設定された海域で、両国はこの範囲では互いの操業を保障することで合意した。ところが中国は18年から昨年5月までにPMZ内に浮遊式の鉄製構造物「深藍1号と2号」を含む合計3基の構造物を設置したため、韓国漁船の航行に支障が生じ、また両国の漁船が対峙(たいじ)する事態も何度か発生した。

 中国は離於島について「中国のEEZ内にある」として「離於島への海洋科学基地設置は不当」との立場だ。離於島は韓国の馬羅島から149キロ(約80カイリ)の位置にあり、中国の童島からの247キロに比べて韓国側に98キロも近い。韓国政府は2003年から離於島に海洋科学基地を設置し担当者を常駐させ管理を続けている。中国は「離於島は韓国側に近いが、両国のEEZが重なる地点にあるためEEZの境界線が確定するまで韓国の所有ではない」と主張している。国連海洋法に基づき各国は沿岸から200カイリまでEEZを設定できるが、西海は幅が狭いため韓中両国のEEZが重なる海域がある。

 中国は「自国の領土は韓国よりもはるかに大きいため、機械的な中間線でEEZを区分すべきでない」と主張している。領土の大きさを考慮し、中間線よりも韓国側により近いラインにEEZを確定すべきとするいわゆる「衝平の原則」を前面に出しているのだ。この自国中心の論理に基づき「離於島は中国のEEZ内」と主張したいのだ。

 これに対して境界線を確定する国際的な慣例は「等距離原則」で、韓国の西海岸や南海岸と中国大陸沿岸との中間起点をつなぐ中間線を基準に両国のEEZを区分するのが合理的と考えられる。この基準だと離於島は韓国のEEZ内となる。そのため現時点で境界線は確定していないが、韓国は離於島に海洋基地を設置した。離於島は韓国と中国の領海外にあり、EEZが重なる海域となるため領海を巡る領有権争いの対象にはならない。

 そのため中国も固定構造物をPMZの外側に設置できるが、あえてPMZ西端に設置した背景には、後にEEZ境界線を確定する際、離於島に対抗するカードを準備するためとの見方もある。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者

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