▲イラスト=UTOIMAGE

 2026年はワールドカップ(W杯)イヤーだ。国際サッカー連盟(FIFA)によると、22年のカタール大会は全世界50億人以上がテレビなどで試合を見たという。そのためW杯は今やスポーツを超えた人類最大の単一イベントになった。アーセン・ベンゲルは「W杯はサッカーが国の言葉になる瞬間だ」と語った。サッカーのクラブチームが資本と市場の論理で動くとすれば、W杯はその国のアイデンティティーと共同体のありのままの姿があらわになる。その国がいかなる哲学と態度で世界と向かい合っているかを示す舞台だ。

【表】 サッカー韓国代表監督の義務と課題

 特に今年の大会は米国、カナダ、メキシコの3カ国共同開催、48の参加国、大陸を移動する長い距離と時差、さまざまな気候条件など、文字通り前例のない規模とシステムで開催される。どの国も徹底した準備と実力がなければ大きな結果は期待できないだろう。世界ランキング22位の韓国代表チームにとってベスト32は当然で、ベスト16は一定の成果だ。また成績に加えて「どんなチームになるか」も一層重要になるだろう。

 この使命を果たすことが期待される人物こそ、クリンスマン退任後に混乱が続き、大きな課題を抱えた韓国代表の司令塔を引き受けた洪明甫(ホン・ミョンボ)監督だ。大韓民国サッカー代表監督は単なる技術やスキルの責任者にとどまらず、公的な組織のリーダーでもあるが、この重要な地位に求められる課題は大きく四つの階層に整理できるだろう。

 その第一は世界のサッカーの潮流を読み取り、これを「韓国独自の方法」で再構築することだ。現代サッカーの戦術パターンの周期は驚くべきほど短期間で変わる。プレスやビルドアップの構造もシーズンごとに再定義される。重要なことはその流れを韓国独自の形で再解釈することだ。その上で韓国代表監督はソン・フンミン、李康仁(イ・ガンイン)、金玟哉(キム・ミンジェ)ら黄金世代の力を最大限に引き出す「韓国独自の戦術モデル」を構築しなければならない。

 第二に確固たる哲学と方向性の確立だ。韓国代表が目指すサッカーは何か。ボール保持のスタイルか、実利を求めるのか、リスクを甘受するのか、安定を優先するのか。これらの問いへの答えがすぐに説明できれば、戦略はぶれず一貫した戦術を持ち続けられるだろう。

 第三に戦略と戦術を選手たちに浸透させるプロセスだ。韓国代表チームは練習時間に制限があり、選手たちは異なったリーグから集まる。そのため監督に求められるのは指示ではなく説得だ。「なぜ今このプレーを選択すべきか」を選手たちが納得し受け入れた時、その戦術は初めて動き出すだろう。

 第四にカルチャーと規範を固く守る「強固なチーム」をつくることだ。それには選手やスタッフに求められる態度に加え、許されない行動の基準が明確でなければならない。個性が強いスター選手たちを一つにする力は監督が打ち出すカルチャーから出てくる。前回のアジア・カップのつらい記憶は規範が緩んだチームがいかにたやすく崩壊するかを学ぶ良い機会でもあった。

 6月の本戦が近づいた今、本来ならこの四つの課題は全てクリアされ完成段階に至っていなければならない。ただそのプロセスはファンや国民にはよく見えない。これが今の韓国代表に対する不安と不信の原因になっている。哲学はあるのか、今の成績や結果は想定され計画された実験なのか、あるいは漂流のシグナルなのか。これらを判断できる材料がない。情報の空白は常に不安を招き、臆測や非難がそこに入り込んでくる。

 この不安はスタジアムで目に見える形で現れた。先日の国際Aマッチで、以前は想像もできなかった空席が目についた。韓国代表が試合をするとき、スタジアム周辺がチケットの手に入らなかったファンであふれ混乱するのは当然だったが、今回その試合会場はあまりに静かだった。この現実を決して軽く考えてはならない。国民が同じ空間で「テーハンミングク」を共に叫び、泣いて笑う大切な時間が失われつつあるのだ。

 ファンダム(熱狂的なファン層)とは「順調なときに良くなる関係性」ではなく、関係そのものだ。私が好きな歌手なら新曲が期待外れでもアルバムを買うし、スポーツチームなら成績がパッとしなくてもスタジアムにやって来るのがファンダムだ。ただし歌手でもスポーツチームでも現状についての説明がなく、方向性が共有されなかったと感じた瞬間からファンは距離を置き始める。

 空席が目立つスタジアムは実力への失望ではなく、関係が緩んでいることへの警告だ。しかしそれでもファンと同じ時間と空間を共有できるチャンスは残されている。その解決作は「結果で報いる」という宣言ではなく、心を開いたコミュニケーションと思いの共有だ。プロセスの説明がなければ信頼は造成されず、一度緩んだ関係は結果だけでは回復できない。逆にプロセスが共有されればファンはスタジアムに足を運び、集団のエネルギーが生み出される。

 今こそ沈黙を破らねばならない。W杯という壮大な旅にファンと国民をコミットさせる戦略はコミュニケーションだ。ヒディンクはそれまで考えもつかなかった高い目線でビジョンを提示し、新たなトレーニング方法を取り入れた。またパウロ・ベントがロングボールではなくビルドアップを訴えた時、国民は結果よりも先にそのプロセスに納得した。結果を残した監督たちはファンを韓国代表の見物人ではなく、代表チームにコミットさせ同じ船に乗せたのだ。

 話が苦手だとか無愛想だとかは理由にならない。定例会見、データに基づく説明、サッカー協会のシステムや別のメッセンジャーを活用するなどしてメッセージを出し続けねばならない。それがあって初めてファンと国民は期待を持ってコミットし、選手たちにも「俺たちは国民の後押しを受けている」という確信を持たせることができる。

 また韓国代表と監督の義務はW杯で結果を残すことにとどまらない。準備そのものを大韓民国サッカー全体の公的な資産とすべきだ。世界のトレンドを分析し、これを独自に解釈して蓄積した哲学、戦術、経験を各レベルのリーグやユースに浸透させねばならない。W杯が終わった後に残るものが試合の結果だけなら、それは失敗と言うべきだ。逆にそのプロセスで整理されたデータや経験が次の世代の肥やしになるなら、そのW杯に出場した韓国代表は成功したと言える。そのためプロセスの共有は選択ではなく義務だ。

 リーダーシップの本質は自らのビジョンと今流している汗の意味をメンバーに説明し納得させることにある。方向性が共有されない状態で目標を設定しても選手は動かないし、共感のない成果は長続きしない。結果は管理できないが、プロセスを共有し信頼を得ることは全面的にリーダーの選択と誠実な努力がないと達成できない。

シム・チャング=スポーティズン代表

ホーム TOP