▲グラフィック=ペク・ヒョンソン
カザフスタンの政治ブロガー、サンザール・ボカイェフ(Sanzhar Bokayev)氏が先日現地のアルマトイ空港で警察に突然身柄を拘束された。AI(人工知能)を使った顔認識システム「ターゲット・アイ」がボカイェフ氏を「市民活動家」と認識し、警報音を鳴らしたためだ。このことが報じられるとカザフスタンの複数の市民団体は過度な監視システムを使う政府に加え、中国に対しても批判を強めている。自国の監視カメ..
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▲グラフィック=ペク・ヒョンソン
カザフスタンの政治ブロガー、サンザール・ボカイェフ(Sanzhar Bokayev)氏が先日現地のアルマトイ空港で警察に突然身柄を拘束された。AI(人工知能)を使った顔認識システム「ターゲット・アイ」がボカイェフ氏を「市民活動家」と認識し、警報音を鳴らしたためだ。このことが報じられるとカザフスタンの複数の市民団体は過度な監視システムを使う政府に加え、中国に対しても批判を強めている。自国の監視カメラやインターネット検閲システムなど「住民監視のための技術」の多くが中国から来ているからだ。カザフスタンのデジタル権利活動家ダナ・マリコバ氏は「カザフスタンで反政府デモが起きた2022年以降、アルマトイ市内には数千台の中国製監視カメラが設置された」と語る。
中国は自国のハイテク技術を総動員した監視システムを海外に輸出している。権威主義諸国を中心に国民監視のノウハウを高める「ツール」となるのはもちろん、社会を安定させる警察の訓練も「パッケージ」として同時に提供しているという。世界のデジタル安全保障を研究するInterSecLabは先日、中国の民間企業Geedge Networksから流出した数万件の文書に基づき、中国がカザフスタン、パキスタン、ミャンマー、エチオピアの少なくとも4カ国の政府にインターネット上の検閲はもちろん、仮想プライベートネットワーク(VPN)の遮断、機器追跡機能などを含む監視ソルーション(課題解決手段)を提供していると明らかにした。InterSecLabは「中国の技術者チームは顧客となる国々の国営通信社データセンターに直接機器を持ち込み、システムを構築した」と指摘している。
■グレート・ファイアウオールを輸出する中国
Geedge Networksは中国のインターネット検閲システム「グレート・ファイアウオール(Great FireWall·GFW、万里の防火壁)」を開発した方浜興氏が率いる企業で、特定のウェブサイトやVPNの遮断、個人の監視が可能なシステムなど、監視システムの輸出に大きな役割を果たしている。ミャンマーの軍事政権は2024年時点で13通信社、26カ所のデータセンターにGeedge Networksのシステムを導入した。このシステムにより数千万人のネットでの活動に無制限アクセスが可能になったという。パキスタンでも従来のファイアウオールがGeedge Networksにすでに入れ替えられた。
中国はこれらのシステムに加え監視・統制に必要な警察の機器や訓練までセットで世界各国に輸出している。今年5月14-17日に開催された第12回中国国際警察装備博覧会(CIEPE)では中国が開発した顔認識システムを持つ警察犬ロボットが正式に登場した。この警察犬ロボットはAI(人工知能)を使って独自の意思決定ができる無人ロボットとして紹介され、ターゲットとなる顧客は各国の警察だった。この博覧会には韓国を含む米国、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリアなど11カ国から30社の企業が出展した。
「警察訓練」も同様で、中国は2000年以降、138カ国に合計900回近くの訓練を提供したという。米カーネギー国際平和財団が明らかにした。訓練回数は10年には年間14回だったが、19年には138回と10倍近く増加した。エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は「世界の権威主義政権の82%が中国から提供された警察訓練を受けた経験がある」との分析結果を公表した。訓練はほとんどが中国国内の警察大学で行われ、数十人規模の海外警察関係者を最長で数カ月滞在させて教育する。参加者たちは中国式の法律執行について学習し、地方公安局の見学や国境管理、鉄道セキュリティーなどのノウハウを学ぶ。場合によっては貴賓の警備、暴動鎮圧など政権維持に必要なシナリオも扱われるという。
■海外に広がる「監視外交」
エコノミスト誌は「今年中国の諮問団がソロモン諸島に渡り、毛沢東時代の住民相互監視システム『楓橋』を伝えた」と報じた。1960年代に浙江省楓橋で始まったこの治安対策のポイントは「紛争や対立は上級警察や裁判所で扱わず、地域で管理・仲裁させること」にある。中国にとって警察教育の得意先となっている中央アジアや東南アジア諸国は国境の安全管理やテロ対策、詐欺や人身売買への対応で中国との協力を続けている。エコノミストによると、中国は「一帯一路」を進めるためアフリカ諸国の治安対策にも積極的に介入しているという。
香港サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)紙によると、中国公安部長は昨年9月に江蘇省連雲港市で開催された「2024グローバル公共安保協力フォーラム」のオープンセレモニーで「中国警察の実務チームを海外に派遣し、その国の法律執行能力を高め、中国と共に合同パトロールや調査を行えるよう教育を行う」と表明した。
中国による監視システム輸出の背景には、習近平国家主席が打ち出したGSI(グロバール安全保障イニシアチブ)構想がある。米ILEA(国際法執行アカデミー)は1995年以降、100カ国以上に対して犯罪対策のノウハウなどをシステムとして提供してきたが、中国はこれに対抗して国際的な安全保障や治安対策で自国の影響力を高める狙いがあるとみられる。
海外に輸出される中国の監視システムは中国国内で緻密かつ高度に設計されたとの見方もある。中国は昨年から公安組織に自動で動くロボットを大量に配備し、顔認識や追跡機能を現場で活用している。国防関連の企業は4足歩行の偵察・攻撃用オオカミロボットまで訓練に投入しているという。世界の監視カメラ市場の40%、世界のドローン市場の70%以上を掌握する中国は今後ドローン部隊、ロボット犬、ヒューマノイドロボットを監視技術における三つの新たな軸にするとの見方もある。
北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員、パク・カンヒョン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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