2017年の大統領選挙で世論操作に関与したとして実刑判決を言い渡され、法廷で拘束された慶尚南道の金慶洙(キム・ギョンス)知事は選挙当時から文在寅(ムン・ジェイン)大統領の側近といわれ、今もそうだ。その金知事が「ドルイドキング」ことキム・ドンウォン被告と共謀し、ネットを通じて大々的な世論操作に関与していたのだが、これを文大統領が知らなかったかどうかは誰もが普通に疑問に感じるだろう。金知事はドルイドキングの事務所を訪問した2016年11月ごろ「文候補(当時)のスポークスマンのような人物」として政務、広報、スケジュール管理などほぼ全ての業務について当時の文候補に報告していたという。文大統領は17年4月に大統領候補として正式に指名された直後、メディアとのインタビューで他の候補者に対するネットでの悪意ある書き込みについて「競争をより興味深くする薬味のようなもの」と語っていた。この頃から金知事は世論操作に必要な記事のURLをドルイドキングにメッセンジャーで送っていた。
ドルイドキングは「経済的共進化グループ」という団体を立ち上げたが、ドルイドキングによると、これが言いにくいとの理由で「キョン・イン・ソン(経済も人間が先)」へと名称を変えたのは文大統領だったという。キョン・イン・ソンのメンバーたちは「共に民主党」の大統領候補を選ぶ予備選挙の会場でも映像に映っていた。文大統領の妻・金正淑(キム・ジョンスク)氏が「キョン・イン・ソンも行きましょう」と言いながらメンバーたちと言葉を交わしていたのだ。
金知事にドルイドキングを最初に紹介した宋仁培(ソン・インベ)氏は文大統領が就任すると大統領府第1付属秘書官となり、白元宇(ペク・ウォンウ)民政主席秘書官はドルイドキングが大阪総領事として推薦した弁護士と直接面会した。ドルイドキング側が大阪ではなく仙台総領事職の提案を受けたとされるその日、金知事が大統領府の趙顕玉(チョ・ヒョンオク)人事主席秘書官と電話で話した記録も残っている。これらの人物は全て以前から文大統領の側近であり、今も政権の実力者たちだ。大統領府は「文大統領は世論操作について知っていたのか」との質問に「あり得ない」としか言わない。腹心が共謀し、他の側近たちも一連の動きに関与していた事案を大統領だけが知らなかったとは考えられないが、その疑問はただ口で否定するだけでは解消されない。
もちろん「ドルイドキング事件がなければ大統領選挙の結果は違っていた」とは考えられないだろう。しかしそれでも大統領選挙当時から行われていた深刻な違法行為を見過ごすわけにはいかない。この事件の本質は文大統領による世論操作だったのか。この点は必ず解明しなければならない。