韓国海軍の元大尉で有名ユーチューバーのイ・グンさん(38)が、義勇兵として参戦したいとウクライナに入国し、論争が起きている。イさんは、ロシアに侵攻されたウクライナを自らの軍事知識を活用して助けたいという意図だと語ったが、韓国政府はウクライナへの旅行禁止警報を下しており、旅券法違反に問われる余地がある。さらに韓国刑法は、政府の許可なく戦闘に参加する行為を禁止している。
イさんは7日、写真共有ソーシャル・ネットワーキング・サービス(会員制交流サイト)「インスタグラム」を通して「ウクライナに無事到着した。私たちは最前線で戦うだろう」と語った。ウクライナ現地に設置したテントと推定される写真も一緒にアップロードした。これに先立ち、イさんは6日に「ウクライナの(ウォロディミル・ゼレンスキー)大統領が全世界に支援を要請したとき、すぐさま義勇兵の任務を準備した」と、出国の事実を明かしていた。
ゼレンスキー大統領は先月26日、「ウクライナ防衛に参加したい方々はウクライナに来てほしい」と、海外に向けて義勇兵の参加を訴えたことがある。その後、海外からの義勇兵およそ2万人がウクライナ入りしたと伝えられている。駐韓ウクライナ大使館によると、韓国からもおよそ100人が参戦について問い合わせてきたが、実際に参戦した人の数は保安上の理由から明らかにしなかった。ロシア国防省は「ウクライナに入国した外国籍の義勇兵がロシア軍に逮捕された場合、戦争捕虜としては扱わず刑事処罰する」との立場を明らかにしている。
イさんは米国で生まれ、2006年にバージニア軍事大学を卒業し、07年に韓国海軍の将校として任官した。海軍特殊戦戦団(UDT)などで服務し、14年に大尉で除隊した。20年にユーチューブのバラエティー『カッチャサナイ』(偽物の男)に教官として出演し、人気を集めた。現在、イさん自身がユーチューブに開設したチャンネルのフォロワー数は76万人を超える。
イさんを巡っては、過去に知人から借りた金を返済していない事実や、わいせつ行為で有罪判決を受けた事実が判明して物議を醸したこともある。イさんは、わいせつ行為での有罪判決については「直接の証拠がなく、被害者の証言だけで決められた判決」だとして罪を否定している。
韓国の現行法上、イさんのように政府の許可なく外国の戦争に参加したら処罰されることもあり得る。韓国刑法は、外国に対し私戦(国の命令なく戦う行為)する者は1年以上の有期禁固に処する、と定めている。また、韓国外交部(省に相当)はウクライナに旅行警報の第4段階(旅行禁止)を発令したが、これに背いて旅行したり現地に滞在したりする韓国国民は、直ちに撤収しない場合、旅券法に基づいて1年以下の懲役または1000万ウォン(約94万円)以下の罰金に処されたり旅券返納・無効化などの行政処分を受けることもあり得る。
イさんは「処罰されるからといって、自分が持つ技術、専門性を通してウクライナを助けてやらずに、この状況でただじっとしていることはできない」とし「生きて帰ってきたら、そのときは全ての責任を取り、処罰を受けたい」とコメントした。またイさんは韓国外交部に向けて「時間を浪費して旅券の無効化をするよりも、どのように支援できるか考えてみるべき」と批判した。
キム・ヨンジュン記者