【コラム】忘れたくても忘れられない文大統領(下)

 (2)「不動産価格上昇は世界的現象、我が国は上昇幅が小さい方だ」=「不動産問題は何度も申し訳ないと言ってきた」と言いながらも、文大統領は住宅価格高騰を新型コロナウイルス流行で増えた流動性のせいや、単身世帯の増加のせいにすり替えてきた。そして、2021年7-9月期の家賃上昇率が経済協力開発機構(OECD)平均の半分にもならないグラフをその根拠として提示した。しかし、同時期に正反対の数字を示す国際統計が存在する。世界的な不動産関連企業が発表した2021年7-9月期の住宅価格指数を見ると、韓国は1年で23.9%の上昇で調査対象56カ国中1位だった。文政権は現実を正しく反映できていない不動産公式統計ばかりにこだわり、不動産の失策をさらに深刻化させた。国土交通部長官は「住宅は不足していない」「住宅価格はあまり上がっていない」と言ったが、住宅価格上昇が全国各地に広がると、慌てて供給対策を打ち出した。それは新型コロナ流行前の状況だ。その後は流動性が増えたため、住宅価格の上昇に歯止めがかからなくなった。

 5年間ずっとこのような攻防が繰り返されてきた。統計を客観的に読み、統計に反映されない現実も素早く把握し、政策を合わせるよう経済専門家らが相次いで苦言を呈したが、文政権には「馬の耳に念仏」だった。最後のインタビューでも文大統領は「固定観念」「フレーム(枠にはめて見ている)」「あっち」といった言葉を使った。政治的攻撃により自身の経済関連治績が低評価されていると思っている様子だった。

 「国の借金が1000兆ウォン(約103兆円)を突破」といった悪い成果ではなく、良い経済指標もある。文大統領は1人当たりの国民所得3万5000ドル(約460万円)、世界第10位の経済規模を達成したと自慢した。為替レート効果がかなりあったか、韓国よりも健闘している台湾に、1人当たり国民所得で19年ぶりに上回られたなどの「ファクト爆撃」でその治績に傷をつけるつもりはない。ただ、世界第12位から第10位へとやや順位を上げた成果、3万ドル(約390万円)を突破して3万5000ドルまで上がった5年間の成果を認めてもらいたいなら、それより前に文大統領が認めなければならないことがあるはずだ。文大統領の前に、最貧国から所得3万ドル、世界第12位の経済大国に到達するまで、韓国の輝く70年の歴史をまず誇りに思うべきだろう。その基礎を築いた李承晩(イ・スンマン)や朴正熙(パク・チョンヒ)といった歴代の大統領たちの功労も認めなければならない。この驚くべき成就と正統性を、文大統領陣営はなぜあのように納得しがたいほどおとしめたのか、説明しなければならない。

 文大統領は「退任後は忘れられて暮らしたい」と言った。だが、最後の2週間に見せた、5年を圧縮したような驚くべき言動は、彼を忘れたくても忘れられない大統領にした。

姜京希(カン・ギョンヒ)論説委員

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