韓国の民間防衛に核シェルターが重要な理由(下)【コラム】

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 避難施設も問題だ。韓国国内の1万7000カ所以上が備えられている-とはいうが、どこにあるのかすら知らない人は多く、きちんと機能し得ないところが無数にある。檀国大学のパク・ケホ招聘(しょうへい)教授は「核爆発時は『7-10法則』に基づいて7時間ごとに10分の1ずつ放射線が減り、2週間後には無視できる程度になる」とし「従って、退避施設には2週間の生存に必要な食品類などを準備しておくべき」と述べた。


【表】20キロトンの核兵器をソウルに投下したときの被害効果

 実戦的な民防衛訓練も、まだ不十分な点が多い要素に挙げられる。今年5月、6年ぶりに全国民を対象とする民防空訓練を行ったというものの、官公署と学校を中心として実施しており、実質的な効果は未知数だった。一方、米国ハワイでは北朝鮮の火星15型ICBM(大陸間弾道ミサイル)発射直後の2017年12月に、住民避難訓練を行ったことがある。日本は2018年1月、東京で第2次大戦以降初めて民防衛訓練を実施し、昨年10月に北の弾道ミサイルが本土上空を通過した際には警報を発令し、鉄道や地下鉄の運行を止めるなど、実際の核民防衛退避措置を行った。

 韓国政府は、8月21日から24日にかけて実施する「乙支演習」で、初めて北の核攻撃の状況を想定した訓練を行う予定だという。これは、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がたびたび指示したことによるものだが、どれほど実効性のある訓練になるかは未知数だ。一部からは、2016年に大統領室と合参(韓国軍合同参謀本部)主導で整備したものの実行が遅れている「北韓核脅威対備政府総合対策」を速やかに具体化し、後続措置を整えるべきだという指摘も出ている。

■フィンランド・スイスなど「核の民防衛」先進諸国はどうしているか?

 フィンランド、スイス、スウェーデン、イスラエルなど防護先進諸国は、強力な汎(はん)国民的防護システムを構築しており、防護分野を産業化することに成功しているケースもある、と専門家らは語る。

 ロシアの核兵器の脅威から防護の必要性を切に認識してきたフィンランドは、防護施設の法制化などを通しておよそ5万4000カ所の避難施設を保有している。これは、フィンランド全人口のおよそ80%を収容できる規模だ。フィンランドは、外部からのさまざまな攻撃に対応できる防空壕(ごう)の開発とともに、平時においては地下防空壕を駐車場やプールなどのスポーツ施設としても活用している。さらに、船舶建造での優れた厚板の技術を活用して防護産業も発展させたという。永世中立国のスイスは冷戦時代、核戦争に備えて全国民が地下に退避できる避難施設を構築しておいた。今でも、およそ870万人の国民全てが避難できるように、全国におよそ36万カ所の住民避難所がある。

 こうした防護先進諸国の事例をベンチマーキングし、韓国も産業化戦略を通して防護体系の構築を進めるべきだという主張も持ち上がっている。防護施設の平時における活用性を高めるため二重用途施設を構築し、防護技術の高度化を通して他の産業分野で活用しようというわけだ。二重用途施設とは、防護施設を戦時あるいは有事の際には避難施設として運用するけれども、平時にはプール、体育館、駐車場などとして活用するやり方のこと。パク・ヨンジュン元陸士(陸軍士官学校)教授=現代建設常務=は「韓国も防護関連の法体系を現在の核・ミサイルの脅威に合わせて再整備し、民資事業の拡大を通して防空壕を多角的に活用できる『K防護』産業化戦略が切に必要」とし「これを通して、欧州の企業が掌握している海外防衛産業市場の防護領域も開拓する必要がある」と語った。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

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