脳波を操縦して「敵の無力化」を狙う中国

中国が開発中の「頭脳操縦兵器」とは?

 米商務省は先月16日(現地時間)、中国軍事科学院傘下の11の研究機関に対する制裁を発表するとともに「これらの機関は頭脳操縦(brain-control weaponry)を含む兵器を開発している」とコメントした。中国軍と民間機関が手を組み、遺伝子操作、人間の能力向上、脳・機械インターフェース(Brain Machine Interface)といった最先端の生物工学技術を軍事的な目的に活用しようとしているのだ。

 実際、中国軍は既に2015年から脳プロジェクトを戦略的に進め、頭脳操縦を兵器化しようという野心をあらわにしてきた。特に、専門家らは、中国が頭脳操縦だけでなく顔面認識、人工知能(AI)などの先端技術も軍事目的や少数民族弾圧に活用しているとみている。人類の共同繁栄のために使用すべき科学技術を、中国は政治的目的に悪用している-というのが米国の主張だ。

■脳波で思考を読み取り、感情を制御

 中国軍の機関紙「解放軍報」の電子版に当たる「中国軍網」は2018年、「大脳皮質から未来の戦争が始まることもあり得る」というタイトルのニュースで「人の脳波は指紋のように唯一無二なもので、脳波データを特定のシステムで翻訳すれば視覚・聴覚・言語・感情などを読み取ることができる」とした。この記事は「膨大な脳波データを分析してこうしたシステムを構築すれば、電磁波などで信号を送り、人間の感情の状態を本人も気付かないうちに変える軍事目的を達成できる」とつづった。具体的な方法を提示したこともある。中国国営の新華通信は2019年、「電磁波や光が頭脳操縦の媒介になる」と報じた。

 人の脳波を読んで感情や思考を把握する技術は、韓国をはじめ複数の国で既に商用化の段階に差し掛かっている。人の脳波は、特定の思考や動作をしようとする際に特定の周波数を示すが、このパターンを電気信号に変換してAIで分析すれば、思考を読み取ることはもちろんロボットやドローンを遠隔操縦することもできる。主に四肢まひや下半身まひの患者がロボットの手足を動かすことに活用される技術だが、中国はこれを軍事的に活用しているのだ。

 中国がバイオ技術で、映画『キャプテン・アメリカ』の主人公のような「スーパー兵士」を作ろうとしているという主張もある。米国のシンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」のエルサ・カニア非常勤研究員(Adjunct Senior Fellow)は、2020年1月に発表した学術論文で「中国は頭脳の反応メカニズムを分析して兵士の反応速度を高めたり、生体技術を用いて兵士たちの反応そのものをコントロールしたりできる研究を進めている」と主張した。中国が人民解放軍の兵士たちを対象に、身体能力の強化のため、さまざまな生体実験を行っているという疑惑も絶えない。

■「中国の技術けん制が狙い」という解釈も

 世界最高水準の中国の顔面認識AI技術、クラウドコンピューティング、ドローン・GPS(衛星利用測位システム)企業も相次いで米国の制裁対象に含まれている。米財務省は「AIソフトウエアは新疆ウイグル自治区の少数民族の顔を自動的に認識し、当局に警報を送ることができる」とし「一部企業は、中国政府がウイグルの少数民族の電子機器を監視できるように自動翻訳技術を提供した」と明かした。米国は、これらの企業が中国当局と協力して新疆ウイグル自治区に巨大な先端監視網を構築したものとみている。ワシントン・ポスト紙は「中国は新疆ウイグル自治区の12歳から65歳までの全ての人の遺伝子(DNA)情報まで収集した」と伝えた。

 ただし米国も、国防の観点から頭脳操縦には巨額の投資を行っている。米国防総省傘下の国防高等研究開発局(DARPA)は2019年5月、遺伝子工学やナノ技術などを利用して、米軍兵士の心を読み取る方法を見つける研究を進めている、と明かした。これを基に、兵士たちの判断および身体の動きを向上させようという計画だ。このため、米国の制裁は、実際のところ中国の道徳上の問題というよりも、バイオ・脳科学などの先端技術を中国が確保できなくしようとする観点からのものではないか-という見方もある。中国国営の「環球時報」電子版は17日、「米国が果てしなく制裁を乱用し、中国企業を弾圧している」とし「人権、新疆ウイグル族の問題を捏造(ねつぞう)し、中国の科学の発展を阻害しようという試み」と主張した。

パク・コンヒョン記者

イ・ボルチャン記者

ワシントン=イ・ミンソク特派員

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