「夫は(生前)親が子を送り出すような悲しみを抱きつつ、先祖の遺物を待つ子孫の気持ちを思って悩みました。寄贈した墓誌(死者の業績を記して墓に埋めた石や銅板など)を大切に守ってください。」
19日午前、ソウル国立中央博物館。「粉青沙器象眼・李先斉(イ・ソンジェ)墓誌」の寄贈式で、寄贈者の日本人・等々力邦枝さん(76)=写真=が感慨深げな表情を浮かべた。邦枝さんは「今回の寄贈が日韓友好のきずなとして残ることを祈っています」と語った。
「李先斉墓誌」は世宗・文宗時代に史官(文書・記録の担当官)や集賢殿(研究機関)の中級幹部に当たる副校理などを歴任した李先斉(イ・ソンジェ)=1390-1453=の墓に入れられた副葬品で、粉青沙器に象眼の技法で文字が刻まれた独特の様式の宝物級文化財だ。盗掘された後、1998年に日本に違法に持ち出され、邦枝さんの夫・孝志さんが購入した。
日本にある韓国の文化財の実態を調査していた国外所在文化財財団は、本紙1998年9月2日付の記事で「李先斉墓誌」が違法に持ち出されていたことを知った。同財団の関係者が差し出した本紙記事を見た等々力さん夫妻は、その時初めて違法に持ち出されたものであることを知り、この墓誌を韓国に寄贈する決意をした=本紙13日付記事で報道=。
昨年死去した孝志さんは、多数の韓日美術品を所蔵していたことで有名だった。「李先斉墓誌は私が最も大切にしていた美術品の1つだが、先祖を思う心は日本も韓国も同じだから、芸術的な価値以上に重要なものがある」と言っていたという。国外所在文化財財団の池健吉(チ・ゴンギル)理事長は「難しい決心をした等々力さんご夫妻は、数字では表せないくらい高貴な名誉と寄贈者という名前を得た」と語った。