生まれた場所は日本、国籍は北朝鮮、活動の舞台は韓国。
在日同胞3世の安柄俊(アン・ビョンジュン、30)の胸の中には3つの国がある。その中でサッカー選手として日の目を見たのは韓国だった。
安柄俊は今年、韓国プロサッカーKリーグに彗星(すいせい)のごとく現れた。Kリーグチャレンジ(Kリーグ2部)水原FCのFWである彼は、今季26試合に出場して21ゴール(4アシスト)を記録し得点王になり、5年ぶりに同チームをKリーグクラシック(1部)に昇格させた。先月30日の授賞式では2部リーグ最優秀選手(MVP)の栄誉に輝き、ベストイレブンのFW部門にも名前を連ねて3冠を手にした。
「今年は思った通りに事が順調に運んで、なんだか怖いです。MVPの授賞式に行く時、エージェントに『こんなに順調で、車の事故で死んだりしないよね?』と冗談を言うほどでした。小学校の時以来のMVPです。授賞式後、お祝いを兼ねて家族と牛肉を食べに外食した時、やっと現実感がわいてきました」
翌1日、水原総合運動場で会った安柄俊にお祝いの言葉を述べると、彼は「実感のなかった1年」と表現した。これまで梁圭史(リャン・キュサ)、金明輝(キン・ミョンヒ)、安英学(アン・ヨンハ)、鄭大世(チョン・テセ)ら在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)系・北朝鮮系選手4人がKリーグでプレーしたが、北朝鮮系選手がMVPになったのは、Kリーグ38年の歴史(1部・2部含む)で安柄俊が初めてだ。