骨折り損の安倍外交、露が北方領土にミサイル配備

領土返還のために経済協力約束、APECでプーチン大統領と会談も…
米の離脱確実でTPPも絶望的に
ベトナムでは日本技術による原発建設計画が中止

 ロシア国防省は22日(現地時間)、クリル列島(北方領土と千島列島)にある自国の太平洋艦隊海軍基地にミサイル「バル」と「バスチオン」を配備した。ロシアのタス通信が報じた。これらのミサイルはロシアが開発した超音速の対艦巡航ミサイルで、クリル列島の防衛体制を強化するために配備された。

 クリル列島は日本北部の北海道からロシアのカムチャッカ半島までの間の1300キロに1列に並んだ56の島を指す。鉱物や水産資源が豊富な上、ロシア艦隊が太平洋に向かう際の通路にもなっている。ロシアのショイグ国防相はクリル列島を軍事拠点化して米国の太平洋艦隊をけん制する構想を抱いており、実現に向けて着々と動いている。

 問題は、ロシアが今回ミサイルを配置した島が、択捉島と国後島という点だ。日本はこの2島に色丹島、歯舞群島を加えた4島を日本固有の領土だとして、第2次世界大戦後71年にわたりロシアに返還を要求してきた。安倍晋三首相はこの領土問題の解決に向けて、再執権後の4年でプーチン大統領と12回も会談し、電話でも6回会話するなど重点的に取り組んできた。

 政治的負担を覚悟で「路線転換」も行った。これまでの日本の政権は「領有権問題を先に解決し、関係改善はその後だ」との立場を堅持してきた。しかし安倍首相は「新たなアプローチ」を試み、今年5月にロシア・ソチでプーチン大統領と会談して大規模な経済協力を約束。日本経済新聞は「安倍首相のアプローチは『必ずしも領有権の解決を優先視するのではなく、まずは日露が信頼を積み上げてから一気に領土問題を解決する』という内容」と分析した。

 しかし現実は思惑と異なる方向に転がった。ロシアが2島に新型巡航ミサイルを配備したことで、安倍首相の戦略は打ち砕かれたのだ。毎日新聞は23日「ロシア政府はこれら2島に(ミサイル配備に続いて)新たな駐屯地の建設も進めている」と報じた。

 安倍外交が壁にぶつかったのはこれだけではない。安倍首相は18日にニューヨークを訪れ、ドナルド・トランプ次期米大統領と会談した後、側近や記者たちに「トランプ氏は信頼できる人物」と称賛した。さらに19-21日にはペルーで、22日にはアルゼンチンで、環太平洋経済連携協定(TPP)発効に向け重要性を訴えた。

 しかしトランプ氏の考えは安倍首相とは全く異なっていた。22日に安倍首相が「米国抜きでのTPPは意味がない」と発言した1時間後、トランプ氏は「就任初日にTPPから離脱する」と動画サイト「ユーチューブ」で表明したのだ。朝日新聞は「最悪のタイミング」だとして「トランプ氏が安倍首相に冷や水を浴びせた」と書いた。日本経済新聞は「TPPの不発によって『米・日が協力して中国をけん制する』という外交・安保戦略まで大きな影響を受ける」との見方を示した。

 また、この日はベトナムの国会も「日本による原子力発電所建設計画の撤回案」を可決した。ベトナムは日本が民主党政権だった2010年、ベトナム南部のニントゥアン省に日本の技術で原発を建設する計画を打ち出した。当初は14年着工予定だったが、11年の東日本巨大地震の後、ベトナム政府が原発の安全性の見直しに着手し、着工時期が何度も先送りされ建設費が膨らんだ。ベトナム政府は日本による原発建設計画の撤回について「日本の原発の安全性に特別に問題があるというわけではなく、当初の建設費(1兆9600億円)では到底建設できないため、財政的に困難となった」と説明した。

東京= 金秀恵(キム・スヘ)特派員
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